不動産取引を始める前に 

【2022年5月3日更新】

不動産業界で働き始めるまでは、不動産取引における各エージェントの役割をほとんど考えたことがありませんでした。    

随分前の話ですが、土地勘がほとんどない状態で物件を探すため、現地日系不動産会社にコンタクトすると、早速いくつか物件を紹介してくれました。内見のために現地で待ち合わせた際にも、仲介の仕組みや料金の具体的な説明はなく「日本人のお客様とは信頼関係でビジネスしてますから、契約書とかサインとか不要です。」とのこと。

問題が起こらない限り、うやむやな説明に基づく、ぬるま湯の取引関係はお互いに楽なのです。不動産取引終了後に「多額の初期費用がかかったが、こんなものなのか」と終わってしまうことが大半です。勤務先が初期費用を支払う駐在員は、請求書の詳細を確認することもなく、家賃補助ギリギリの高額の賃貸物件を選んでしまうことがあるようです。同時に仲介料も最大となりますが、翌年の値上げにより、家賃補助を超えてしまうかもしれません。

契約社会のアメリカで不動産を買ったり、借りたりする前に、理解しておくべき点がいくつかあります。

🍏 不動産ライセンス保持者は各取引において、自分の役割を明確にする義務があります。お客様と言っても「クライアント」なのか「カスタマー」なのかによって、エージェントの業務の範囲が異なります。それを知らずにカスタマーがエージェントにうっかり話した内容が、そのエージェントにとってクライアントである物件オーナー(売主・貸主)が交渉に有利になるように伝えられてしまうリスクもあります。

🍏 仲介手数料を誰が払うのか、料金の相場はどのくらいなのかは、ニューヨーク市内であってもエリアと物件のレベルによりばらつきがあります。家主が仲介料をカバーする場合には、不動産仲介会社・エージェントは顧客にその事実を伝える義務があるものの、その情報は開示されず(賃貸契約書をよく読むと記載があるはずですが)、本来仲介料なしとなるべき物件を借りても、仲介手数料を要求されるケースが多いようです。

🍏 物件購入の場合、買い手エージェントがいてもいなくても、売主が支払う仲介料は変わりません。売り手・買い手の双方を代理するデュアルエージェントによる両手取引はニューヨークでは合法ですが、多くの州では違法です。両者の利益を同時に最大化することは不可能だからです。

🍏 顧客囲い込みの一環として、初期費用を立て替えたり、住宅ローンを貸し出したりと、金融業を行っている不動産会社があります。ワンストップサービスは、顧客にとって便利な一方で、後々トラブルになりかねません。「セキュリティデポジットを返さないので、取引を中止した。」という話を伺うことがあります。