Fairness in Apartment Rental Expenses (FARE) Act
ニューヨークシティでのお住まい探しは米国の他の大多数の都市よりも複雑で難しいと言われています。住宅供給に対して入居希望者が多いため、空室率が極端に低く、家賃は年々上昇しています。賃貸契約時に入居者(テナント)が支払う初期費用はかなりの金額です。
入居者募集の際、(1) 家主自身が広告するケース、(2) 家主が不動産仲介会社(リスティングエージェント)を雇って広告するケースがあります。(2) において家主が仲介手数料を一切負担しないことも多く、リスティングエージェントはテナントから仲介手数料を受け取って来ました。
2025年6月、ニューヨーク市でFARE Actが施行されました。主な変更点は以下のとおりです。
(1) リスティングエージェントには家主自身が仲介料を支払うこと
家主の依頼を受けて入居者募集の広告を出す不動産会社(リスティングエージェント)の仲介手数料は家主自身が支払わなければいけません。リスティングエージェントが仲介料を家主の代わりにテナントに請求することは違法です。
リスティングエージェントが「弊社をテナントエージェントとして雇ったら(つまり弊社に仲介料を支払ってくれるなら)この部屋を借りられる」とテナントに要求することも違法です。
ただし、ニューヨーク州では両手取引が認められているため、家主とテナントが承諾するのであれば、リスティングエージェントがテナントエージェントを兼務し、家主とテナントの両者から仲介料を受け取ることは違法ではありません。
(2) 賃貸契約前に諸費用の詳細が開示されること
賃貸契約時にテナントが支払う初期費用にはセキュリティデポジット(最大家賃1か月分)、初月家賃、その他の諸費用、仲介手数料等が含まれます。ご自身が雇っていないリスティングエージェントの仲介料が含まれていることも多くありました。FARE Act施行により、家主もしくはリスティングエージェントは賃貸契約における諸費用の詳細をテナントに説明することが義務付けられました。
以上、テナントを保護が目的にルール変更ですが、必ずしも良い点ばかりではありません。次のような意見もあります。
・リスティングエージェントに仲介料を支払うことになった家主はそのコストを回収するために家賃を上げることになり、テナントが支払うトータルコストは下がるどころか上がってしまう。
・リスティングエージェントに仲介料を支払いたくない家主は自身で入居者募集することになり、リスティングエージェントによる一般消費者向け物件広告が減っている。
ちなみに、エリア・物件選びから賃貸契約までのサポートを受けるためにテナントエージェントにお住まい探しをご依頼なるお客様にとっては、リスティングエージェント分の仲介料をご負担頂く必要がなくなりました。
【2025年8月8日更新】